~2年に1度、群馬県中之条町にて開催される国際現代芸術祭。今年は国内外のアーティスト125組の作品が展示。~
2023年10月4日(水) 『中之条ビエンナーレ2023』に行ってきました。
『中之条ビエンナーレ』は、中之条町を舞台に2年に1度開催される現代アートの祭典です。
2007年から始まり、今年で9回目の開催となります。
今回は、国内外のアーティスト125組の作品が紹介されていました。
期間:2023年9月9日 (土)~10月9日 (月) 9:30-17:00
5つの鑑賞エリア《中之条市街地(なかのじょうしがいち)・伊参(いさま)・四万温泉(しまおんせん)・沢渡暮坂(さわたりくれさか)・六合(くに)》、44会場にて開催されました。
国際現代芸術祭「中之条ビエンナーレ2023年」
~Cosmographia(コスモグラフィア)-見えない土地を辿る-~
■【展示会場】群馬県中之条町の約40か所
(エリア)中之条市街地(21)/伊参(57)/四万温泉(20)/沢渡暮坂(9)/六合(15)/
■【期間】2023年9月9日(土)~10月9日(月) 9:30-17:00
■【パスポート】1500円 / 高校生以下 鑑賞無料
■【参加加アーティスト】125組
■【主催】中之条町 / 中之条ビエンナーレ実行委員会 / 中之条ビエンナーレ運営委員会
(パンフレット)
(中之条ビエンナーレ2023 会場マップ)
※群馬県公式YouTubeチャンネル「tsulunos」より
中之条ビエンナーレ2023の【伊参エリア・会場:やませ】にて、作品を展示された作家さんたち(早崎真奈美さん、浅野暢晴さん、滝沢礼子さん、西島雄志さん)によるご自身の今回の作品についての解説があり、とても興味深かったです。
綜合ディレクターの山重徹夫さんは、2006年より群馬県を拠点に文化発信することを目的に中之条ビエンナーレを立ち上げられ、2007年から総合ディレクターを務められています。
(伊参エリア)会場:やませ・母屋一階
伊参(いさま)エリアにある会場「やませ(旧神保家住宅)」は、江戸時代末期に建てられた大規模民家で、県の重要文化財にも指定されています。
◆浅野 暢晴(あさの のぶはる)さん/《異形の食卓》
私が作る彫刻は「トリックスター」と呼ばれています。彼らは、人間が見ること、触れること、交流することが難しい存在です。そんな存在に実体を与え、彫刻としてこの世に現すことが私の仕事だと思っています。今回は、彼らから食事会へのお誘いがありました。空いた一席に座って、異形の食卓へぜひご参加ください。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「浅野 暢晴さん《異形の食卓》」より
※浅野 暢晴さんが、9月12日に行われた総合ディレクター山重徹夫さんとのアーティストトークの中で、作品の解説をされています。
※中之条ビエンナーレ2021の浅野 暢晴さんの作品は《トリックスター百鬼夜校》
今回、やませの会場では、3本足の異形の生き物「トリックスター」が約600人も大集合しているとのことです。
今回は、トリックスターが約600人集合という壮大なスケールでとても驚きました。
中之条の標高約750mの丘の上に立っている、縁側や神棚、仏壇のある大きな古民家で、普段はなかなか交流できない彼らと、お盆の風景や食卓を共有できて嬉しかったです。
いろんな所に潜んでいるトリックスターを探すのも楽しかったです。
(※浅野 暢晴さんは、2019年11月に埼玉県本庄市で「こだま芸術祭」が開催された時に、展示会場となっていた戸谷八商店にトリックスターの作品を展示してくださいました。※その時の様子はこちらをご覧ください。)
◆早崎 真奈美さん/《よわいわたしをまもる棘》
樹齢 600 年の「中之条のサイカチ」は牧場(まきば)の名残とされています。莢に含まれる石鹸のような成分は馬を洗うのに使われました。もう一つの特徴である鋭い棘は身を守る為に進化したと考えられます。一方、私たち人間は牙や爪ではなく、道具を使うように進化しました。また、見えない疫病や天災を恐れるようになり、中之条のサイカチが鬼門除けに植えられているように、植物の棘はよく魔除けに使われたようです。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「早崎 真奈美さん《よわいわたしをまもる棘》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での早崎 真奈美さんの作品《個体としての君》
◆山形 敦子さん/《消えゆく土地の記憶》
中之条町には口承でしか残されていない地名がたくさんあり、市町村合併や人口減少、世代交代や生活様式の変化によりその地名は失われつつあります。
平成 6 年に中之条町教育委員会が発行した『中之条町の地名』という本を手がかりに、口承地名を辿ってやませのある岩本上組(かみぐみ)を歩きました。現在のその場所の写真と口承地名、また地元の方にお聞きした場所にまつわる物語で作品を構成しています。
お話をお聞かせ頂いた中沢武さん・嶌村真也さんに感謝いたします。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「山形 敦子さん《消えゆく土地の記憶》」より)
この地域で口伝えに伝承されてきたという、“やませ”についてのものがたりが味わい深かったです。
◆滝沢 礼子さん/《風・光》
◆五十川 祐さん/《Cleaners》
《Cleaners》は、文字通り「掃除をする人」「きれいにする人」を意味します。空間に配置されたオブジェクトは、掃除道具を模した形状をしており、それぞれが言葉を持っています。
この作品では、オブジェクトが掃除をしているのか、それとも何かメッセージを残しているのか、また、何が起こったのかという状況を想像することで、自己の記憶や体験がオブジェクトに投影されることを目指しています。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「五十川 祐さん《Cleaners》」より)
◆久木田 茜さん/《Ornament Pattern of Natural Plants》
自然のイメージを抽象化し人工物に付属する装飾は、作者不明の美しい表現。装飾文様の無限に広がるような連続性は、生命力を私たちに与えます。
古代から近代の文様様式を参照しながら、装飾という行為とその表現について考えてみたい。中之条の植物をメインで用いて、世界の様々な装飾文様のパターン構成を試みます。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「久木田 茜さん《Ornament Pattern of Natural Plants》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での久木田 茜さんの作品《いのちの紋》
◆しばた みづきさん/《くだ》
くだ(管)は、中が空洞になっていて、両端が閉じられていない形をしている。それはつまりドーナツであり、ヒトである。これらの「くだ」は、様々なところに繋がりを持って広がっていく。まるで、人々の交流のように。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「しばた みづきさん《くだ》」より)
※中之条ビエンナーレ2021でのしばた みづきさん作品《快適な部屋をつくるには》
◆三梨 伸さん/《小動物の宿 KIGOYA》
小さな生き物の為の宿です。
半年のオープンで越冬は出来ませんが、色々な来客をお待ちしております。
申し訳ございませんが人間は泊まれません。
お静かに御観覧いただくようお願いいたします。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「三梨 伸さん《小動物の宿 KIGOYA》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での三梨 伸さん作品《「やませ」で庭いじり》
やませから見える霧の中の山村風景は、時間がゆっくりと流れているようで、静寂で神秘的なものを感じました。
(伊参エリア)会場:やませ・蔵
◆ウッティン・チャンサタブートさん/《ごく小さな火の鳥のバラード》
《ごく小さな火の鳥のバラード》では、生命の言語である DNA 配列を主な素材として、さまざまな実験的な楽器の形をした動く彫刻を制作しています。このプロジェクトの最初のアイデアは、2つの疑問から生まれました。
1、微生物のような非人間的な存在が、その生物学的システムの中で特定の出来事を観察し、記録することは可能でしょうか?
2、場所の記憶を持つ微生物に埋め込まれたメッセージを、私達はどのように読み解くことができるでしょうか?
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「ウッティン・チャンサタブートさん《ごく小さな火の鳥のバラード》」より)
※中之条ビエンナーレ2021でのウッティン・チャンサタブートさんの作品は《クロス - ワード》
◆古賀 充さん/《誕生のためのヴァリエーション》
生命とはどのような形であるのか考えることとした。
言うなればそれは繭のような、糸で覆われた内面を外から知ろうとする行為である。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「古賀 充《誕生のためのヴァリエーション》」より)
存在の生成過程についての言葉。
(伊参エリア)会場:やませ・離れの書院
◆TETTA(杉本聡子) さん/《しつらい》
みやびやかに空を舞う鳥追う鳥、桑の木の異形は
業のしるし、皆は山を食べ、
欠落を補い信仰は続く。
この土地のいとなみ。
ちょうどを立てる。草花を飾る。
ふすまを、開け、閉め、空間を整える。
風景の間をしつらえ、来たる誰かを待つ。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「TETTA(杉本聡子)さん《しつらい》」より)
※中之条ビエンナーレ2021でのTETTA(杉本聡子)さんの作品は《Paradise Paradise / Microcosms》
会場:やませ・母屋2階
◆鉾井 喬(ほこい たかし)さん/《 山に立ち風上を捉える》
江戸時代に材木商で一材を成したやませ。
目の前の山々は時代と共に役割と姿を変えてきた。
明治にかけて炭焼きが盛んに行われ、昭和から平成にかけて福島の原発からの送電線網が走り、現在はソーラーパネルが並ぶ。
人が山に入る機会が減った今、自然が戻り始めている。一方でそびえ立つ送電線によって私達の便利な生活は成立している。
かつて山の神はより身近にあり豊穣と安全を願った。エネルギーの存在も山を通して感謝をする時なのかもしれない。自然と人工的なエネルギーの狭間に立つこの場所にて、風をメタファーにその関係性を問う。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「鉾井 喬さん《 山に立ち風上を捉える》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での鉾井喬さんの2作品。①《Small Interaction》/②《Windgraph -Nakanojo-》
鉾井 喬(ほこい たかし)さんは、元NHK福島放送局の報道カメラマンで、東日本大震災の2年後退局され、現在、現代美術作家として活動されています。(※詳しくはこちらをご覧ください。)
やませの門の横には、鉾井さんの作られた撮影装置がありました。先頭部分にピンホールカメラが取り付けられていて、そこで撮影された風の写真がやませ2階に展示されているとのことです。
鉾井さんは、自然の中の、「目に見えない風を可視化する」ことをコンセプトに作品づくりをなさっています。
ピンホールカメラの特性(わずかな光をゆっくりと時間をかけて集め、1枚の写真を撮る)を利用して、露光時間を8分19秒に設定し、その8分19秒の間ずっと、風上の光を捉え続けています。
8分19秒というのは、太陽で生まれた光が地球上の自分の元に届くまでの時間と言われているとのことです。※鉾井喬さんの作品づくりについては、鉾井 喬「Atelier ↺ Gallery Project “風はどこで生まれたのか?” 」をご覧ください。)
「エネルギーと自然の関係性を問うことを、風というモチーフをテーマに様々な視点から試みている。現在は福島と東京を行き来する2拠点生活をし、自然の中に生かされていること、そしてエネルギーを使わせてもらうことに感謝をしながら表現と向き合いたいと考える。自然と人間社会を二分するのではなく、双方を行き来しながら、多面的な価値観を持ち得た、動的な問いかけをしていきたいと思う。」 (※鉾井喬さんウェブサイトより)
◆西島 雄志(にしじま ゆうじ)さん/《環 kan》
この世は既に充ち満ちている。 循環しカタチを変えて姿を現す。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「西島 雄志さん《 環 kan》」より))
※中之条ビエンナーレ2021での西島 雄志さんの2作品。①《吉祥 kichi-shou》/②《真神 MAKAMI》
「やませ」2階の屋根裏には、見事な梁がありました。その梁は、約170年に渡って家を支え、守り、静かに見守り続けてきた歴史的なもので、とても美しかったです。
その梁の下に、西島 雄志さんによる2体の神鹿の作品、「環 KAN」が展示されていました。
西島さんは、普段、時間を見つけてはご自分の手で銅線を渦状に巻いて、彫刻作品のパーツとなるものを作る作業を、日々繰り返されているとのことです。長い歳月をかけて、何千ものパーツが作られたあと、その渦状のパーツひとつひとつがつなぎ合わされることで、作品がつくられていきます。
西島さんの作品で惹きつけられるのは、作品の表面の全ての部分がパーツで埋め尽くされているのではなく、表面に見事な、“省き”や、“欠け”、“残余”、“余白”のようなものが導入されているところです。
あえて手を付けないで残された2体の神鹿の余白部分から、悠々と巡る気配のようなものが感じとられ、神聖な気分を味わわせていただきました。
【中之条ビエンナーレ 国際現代芸術祭ウェブサイトの「アーティスト・西島 雄志さん」紹介ページ】より
「人の「存在」や、その「気配」に興味がある。
空間に満たされたものを感じ取り、形を与えてみる。 与えられた形から、空間を再構成する。 光を通して感じとる形により、「気配」を視覚化している。
一方で、時間の積み重ねという側面からも「存在」と「気配」を思考する。自らの手で一つ一つ捻り巻いた銅線のパーツを自分 の過ごした時間とし、その集積を用いて形を与えていくことで、時間の概念を加えている。
視覚的な「気配」と、時間の概念から組み立てられる世界を同時に存在させることで二重の構造を空間に作り出し、その現象を 用いて直接的に感覚に問いかけたい。
近年は、「存在」と「気配」を思考する中で、「神」をモチーフに用いている。 「神」とは人が感じ取る「第六感」の別名ではないかと考えている。」
※西島雄志さんが、9月12日に行われた総合ディレクター山重徹夫さんとのアーティストトークの中で、やませとの出会いや、やませ2階での作品づくりの過程等について述べられています。
◆彫刻家 西島 雄志さんのウェブサイト:
◆「gallery newroll(ギャラリー・ニューロール)」
※西島雄志さんの運営するギャラリー・スタジオ・カフェ
ウェブ:
インスタ:
https://www.instagram.com/gallery.studio.cafe_newroll/
《西島 雄志さんの作品の動画》
※岡安 賢一さんによる動画撮影。
◆Yuji Nishijima NAKANOJO BIENNALE 2019 short
※「中之条ビエンナーレ2019」にて展示された西島雄志さんのの3作品。
・旧廣盛酒造:《存在の力 Power of existence》(※神鹿の作品)/《記憶 Memory》(※猫の作品)
・やませ:《気 life energy》(※馬の作品)
◆中之条ビエンナーレ2021 【真神】【吉祥】long
※「中之条ビエンナーレ2021」にて展示された西島雄志さんのの2作品。
・旧廣盛酒造:《真神 MAKAMI》(※狼の作品)
・旧五反田学校:《吉祥 kichi-shou》(※鳳凰の作品)
◆【二条城】吉祥 プレBIWAKOBIENNALE2022
※「プレ BIWAKOBIENNALE2022」では、世界遺産「二条城 二の丸(御殿台所・御清所)」にて、西島雄志さんの作品《吉祥 kichi-shou》が展示されました。
※《吉祥 kichi-shou》は、「中之条ビエンナーレ2021」にて展示された作品です。
◆【瑞雲 zui-un】国際芸術祭 BIWAKOBIENNALE2022
※「BIWAKOBIENNALE2022」での西島さんの展示会場は2か所ありました。
上記動画の映像は、1か所目の会場「彦根エリア・鳥居本地域の【有川家住宅別邸(0-7)】」にて展示された西島雄志さんの3作品です。
《瑞雲 zui-un》(※龍の作品)
背景の襖に墨絵を入れたり、壁への微かな着色、床を抜いて水を張ったりされたそうです。“龍”の背景となる建物への手入れが素晴らしいです。
《神鹿 #1》/《神鹿 #2》。
※展示会場2か所目の「近江八幡エリア【カネ吉別邸(H-13)】」では、二条城での西島さんの作品《吉祥 kichi-shou》が展示されました。
(群馬県指定文化財「やませ」について)
中之条ビエンナーレの会場となっている「やませ(神保俊二郎家)」は、寛文6年(1666年)に、本家である神保武彦家から分家した家で、「材木問屋」を営み財をつくり、文政12年(1829年)の江戸の大火のときに巨額の富を得たといわれる、約170年もの歴史を持つ、群馬県内で最大級の民家です。
「神保家は通称「ヤマセ」と呼び、本家神保武彦家から寛文6(1666)年に分家した家で、材木問屋を営み、財をつくり、文政12(1829)年の江戸の大火のとき巨額の富を得たといわれている。
母屋は切妻造り総二階、出し梁造りで、屋根は亜鉛鉄板瓦棒葺(当初は瓦葺)である。東側にはぬれ縁、北側には便所、風呂場、ぬれ縁、物置、西側には便所をつけている。
建物の規模は、桁行(間口)29.14m、梁行(奥行)15.04mで群馬県内で最大級の民家である。現状平面は、西側に土間をとり、床上を四列にした部屋にし、東側から一列目は、ジョウダン(ツルノマ)、ツギノマ(カメノマ)、マツの三部屋でこの東側に畳敷きの廊下をつけている。ジョウダンには床の間、棚、書院をつけている。二列目も三部屋つづきで、オクリ、ナカノマ、ヨリツキを配し、三列目にはコザシキ、チャノマで、四列目はショクジバ、オコタノマとしている。ここに敷いてある畳は百三十三畳である。
当家の建築年代は、天保9(1838)年生まれの人が16歳の時の建築と伝えること、建築様式などから嘉永6(1853)年と推定している。
昭和43年の群馬県緊急民家調査で26棟の中に入ったもので、母屋のほかに、離れ、土蔵、置物の建築様式から、江戸時代末期の大規模民家として貴重なものである。」
平成29年3月 中之条町教育委員会(※案内板より)
(中之条市街地エリア)会場:上之町商店街
◆山本 純子さん/《Naive Material Gradation》
1950 年以降盲目に大量生産されてきたプラスチックの総量は、 スカイツリー 23 万棟分に相当する。
99%は半永久的に分解しない石油化学製品であり、リサイクル率は 9%未満。 毎分、 ゴミ収集車 2 台分のプラスチックが海に流れ込み、 2050 年にはすべての魚の重量を超えると言われている。 私達はプラスチック依存から抜け出せるのか。 作品には家庭で生成した植物性プラスチックを使い、 日本伝統の柿渋で色づける。 安価で遍在する無感情なプラスチックを、 貴重で美しい素材として再定義し、自然の一部となりうる未来のナラティブを提起する。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「山本 純子さん《Naive Material Gradation》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での山本 純子さんの作品。《Distant Intimacy》
◆CLEMOMO(クレモモ)さん/《NIKU NIKU》
私たちは肉です。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「CLEMOMOさん《NIKU NIKU》」より)
※中之条ビエンナーレ2021でのCLEMOMOさんの作品。《中之条の粘土》
(中之条市街地エリア)会場:旧廣盛酒造
◆大野 光一さん/《遠くで星が燃える》
私は人の顔をモチーフに絵画を制作しています。
現代社会では社会生活を円滑に過ごすために常に顔を整え、感情もオブラートに包んで表現する。
子供の頃から徐々に社会性を身につけていく過程で顔はアイコンの様な物になっていく。常に整えて、その場によって使い分ける感覚は現代的ですが、そのタガが外れた顔はとても恐ろしく、美しい。私は人の顔の薄い皮膚の裏側に、その人の魂の様なものが有ると感じています。その人の本質を包み、変換し透過する。カーテンの向こうで揺らめく美しいかがり火。そのカーテンのような物を造りたいのです。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「大野 光一さん《遠くで星が燃える》」より)
◆曾超(ソチョウ)さん/《日本の文人と出会いを求める》
福岡伸一著『動的平衡』によれば、生命現象の核心を解くキーワード、それは「動的平衡」(dynamic equilibrium ダイナミック・イクイリブリアム )。
老子や荘子の「気」の思想において、宇宙は「気」の動的平衡と考える。また、気が生命力や活動力の根源でもあると考えた。私は、様々な筆致の運用に基づいて仮山石(庭石、文人石)を画面に描き出すことである。ここで、「気韻生動」という概念の意味の重要さを再認識するとともにその概念の現代芸術表現上の新たな可能性として再検討しようと試み制作を進行させた。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「曾超さん/《日本の文人と出会いを求める》」より)
◆鹿野 裕介(しかの ゆうすけ)さん/《醸しの間》
酒を愛する者にとって、酒蔵で作品を作り展示することは名誉なことであるが、そこの酒を呑めないという悲しいジレンマがここにはある。
酒を作るということ。いや、酒を醸すということ。
今回は、作品を作るということではなく、なるべく作品を醸したい。
そんな作品をよく飲み、よく酔っていただければ幸いです。
もちろん、お酒は二十歳になってから。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「鹿野 裕介さん/《醸しの間》」より)
※中之条ビエンナーレ2021での鹿野 裕介さんの作品。《不燃の木》
◆セキ・イコネンさん/《旅の神様を追って》
出発点は、数年前に大阪の国立民族学博物館で出会った道祖神。木片の一部が削られて墨で顔が入れてあり、素朴だが魅力的で、制作は中之条町 1978 年。
ビエンナーレへの参加で中之条に来てみると、木の道祖神は六合の伝統で、現在はほぼ絶えて来ている事がわかった。一方で、山道には現在も数十の石の道祖神が残る。仲良く二人寄り添う様子の道祖神から、人が人と織りなす深い結びつきや、自然との関わり方が伝わってくる。プロジェクトを通じて出会った人々について、花や山、養蚕や畑、また仲間との関わりをポートレート作品にした。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「セキ・イコネンさん/《旅の神様を追って》」より)
(中之条市街地エリア)会場:つむじ
地産の食材を活かしたカフェや、伝統工芸品や作家の1点物などが揃う雑貨ショップ、ワークショップの開催、アートの展示など、文化や芸術に気軽に触れることができる施設。
(群馬県吾妻郡中之条町大字中之条町938)
◆いちろとちひろさん/《はじめまして、なかのじょう。》
はじめての地に触れるという体験は、人と出会い関係を築いていく様と似ている。
本作品では、中之条という地を人格として捉え直すことで、この土地の新しい一面に出会い、その本質を見つめることを試みた。中之条町民 19 人が思う中之条、外部の人間である我々から見た中之条、AI から見た中之条。さまざまな方向から捉えた“なかのじょう” との出会いを通して、ぜひあなたも、あなたから見た中之条と向き合ってみてほしい。
(中之条ビエンナーレ2023 オンライン 特設ウェブサイト「いちろとちひろさん/《はじめまして、なかのじょう。》」より)
今回、はじめて「やませ」での作品鑑賞をさせていただきました。
浅野暢晴さんの「異形の食卓」、西島雄志さんの「環 KAN」、鉾井喬さんの「山に立ち風上を捉える」、山形敦子さんの「消えゆく土地の記憶」など、素晴らしい作品を見せていただき、本当にありがたかったです。
約170年前に建てられたという材木問屋「やませ」は、何世代にもわたって家や、この地域の山村文化・風習を支え続けてきました。
この土地に滞在し、この土地に受け継がれてきた文化風習や歴史を踏まえながら、歴史的建造物の中で現代アートを展示することは、「やませ」を単に過去の遺産としてのみ扱うのではなく、「やませ」という空間に新しく命を吹き込み、新たな魅力ある伝統文化の場として、生きた文化として、受け継がれていくように感じました。
アーティストの方々が、中之条に滞在し、中之条の文化風習、歴史等から様々なインスピレーションを得て、素晴らしい作品を誕生させるという「中之条ビエンナーレ 国際現代芸術祭」は、地域を豊かで多様なものに変えてくれるかけがえのない取り組みだと思います。
素晴らしい会場を提供してくださった中之条の地域の皆様と、アーティスト方々、ありがとうございました。