~渋沢栄一翁が2024年から新一万円札の顔になることを祝して、栄一翁と縁が深い本庄宿の旧家「諸井家」に関連する場所(ワンダーファブリック様、愛宕山)を皆様と巡ってみました。~
◆戸谷八商店での「本庄すまいる日和2023-春夏版-」
・開催日 : 2023年6月14日(水)・2023年7月2日(日) ①10:00~11:30/②13:00~14:30
・場所:戸谷八商店(埼玉県本庄市中央1-7-21)
・テーマ:『本庄歴史探訪 老舗15代目が語る本庄宿と埼玉の偉人・渋沢栄一翁』
中山道最大の宿場町だった本庄宿。全国でも有数の養蚕地域だった埼玉県の県北地域。今回は戸谷八の歴史建物などの見学に加えて、渋沢栄一翁が2024年から新一万円札の顔になることを祝して、栄一翁と縁が深い本庄宿の旧家「諸井家」に関連する場所(戸谷八の近くのみ)なども皆様と巡ってみたいと思います。諸井家からは、秩父セメントを創業した大実業家や外交官、作曲家、芸術劇場館長など、多才な方が輩出されています。
・各回定員:5名
・お申込み受付時間:13:00~17:00(水曜・日曜・祝日をのぞく)
・予約締切:実施日の3日前まで
・☎090-3107-8770
(※「本庄すまいる日和」については、「本庄市HP」のこちらをご覧ください。)
◆【午前の部】にご参加いただいた皆様
◆【午後の部】にご参加いただいた皆様
【戸谷八稲荷にて】
【愛宕神社(あたごじんじゃ)にて】
愛宕神社には、諸井時三郎(春畦)氏によって揮毫された『敬神』碑があります。
時三郎(春畦)氏の兄が、秩父セメントの創始者である諸井恒平(もろい つねへい)氏です。渋沢栄一翁とは親戚関係にあたります。
諸井時三郎氏は、書の大家であ西川春洞(にしかわ しゅんどう)に師事し、妻の「華畦(かけい)」氏とともに、「春洞門七福神」と称され、明治書道会の会長をつとめ後進の育成に尽力されました。
◆「W@NDERFABRIC®(ワンダーファブリック)」さんにて
6月14日に開催された戸谷八商店での「本庄すまいる日和」では、諸井家に関連する場所として、今井俊之さんのCAPブランドのお店「W@nder Fabric(ワンダーファブリック)」をご訪問させていただきました。
今井俊之さんは、2023年3月21日に、「旧本庄仲町郵便局」(昭和9年に諸井恒平によって建て替えられた建築物です。国登録有形文化財。)の所有者である諸井家の方からお借りして、縫製工房と展示ショップを兼ね揃えた店舗「W@nder Fabric(ワンダーファブリック)」をリニューアルオープンされました。
上里町出身の今井俊之さんは、独学でCAP作りを学ばれ、平成28年(2016年)、東京都内で、着物生地や着物帯などを用いるCAPブランド「W@nder Fabric(ワンダーファブリック)」を立ち上げられ、オンラインストアをオープンされました。
「日本の伝統文化である着物の魅力と、現代のファッションとが溶け込んだ新しいCAPを作りたい」との思いから、一つ一つ手作りで、西陣織や、桐生織、伊勢崎銘仙、大島紬、本庄絣など、日本の伝統生地や着物の生地を使ったCAP作りを行っていらっしゃいます。
2016年~2017年には、原宿やロサンゼルス(アメリカ・カリフォルニア州)で、期間限定のショップもオープンするなど、これまで国内外において、精力的に活動されています。
●2015年、試作開始、着物の解体やクリーニング、生産までの基盤作りを行う。
●2016年、製品完成と同時にブランド「W@nder Fabric(ワンダーファブリック)」設立、オンラインストアオープン。
●2016年、原宿にて期間限定POPUPSHOPオープン。
●2016年、米国セレクトショップH.Lorenzoにて発売開始(現在は企画終了)。
●2017年、原宿にて期間限POPUPSHOPオープン。
●2018年、自社工房設立(※埼玉県本庄市)。
●2019年、自社生産商品の販売開始。
●2019年、埼玉県主催香港SOGO販売会。
平成30年(2018年)、二人目のお子様が誕生されたことを機に、今井さんは、埼玉県本庄市にて自社工房を立ち上げられたとのことです。工房では、裁断から縫製までの全工程を、今井さんお一人で手掛けられておられます。
これまではオンラインのみでの販売でしたが、このたび、令和5年(2023年)3月21日に、「旧本庄仲町郵便局」にて工房&ショップをリニューアルオープンされました。
中山道の歴史的建造物「旧本庄仲町郵便局」の中に、伝統的織物と現代ファッションが融合したCAP製品が一同に並ぶ光景は、とても美しかったです。
「W@nder Fabric(ワンダーファブリック)」の営業時間は14時~17時頃。土曜・日曜・祝日定休です。
◆【ワンダーファブリック様ウェブサイト】
WEB:
STORE:
https://wonderfabric-store.com/
◆【ワンダーファブリック様 Instagram】
https://www.instagram.com/wonderfabric_japan/
◆【ワンダーファブリック様 Facebook】
https://www.facebook.com/wonderfabricjapan/
内装は、ものつくり大学の岡田公彦准教授と岡田研究室の学生さんたち、須田修二一級建築事務所の須田修二さん(ものつくり大学非常勤講師)のご協力のもと、リノベーションが進められたとのことです。
製作されたCAPを展示する棚は、ものつくり大学にて、授業で使われなくなった木材が使われ、「軒先」が連なるように設計・制作されているとのことです。
日本家屋に継承されてきた内と外とを隔てない独特の境界の表現、壁で遮るのではなく、日本独特な柔らかい仕切りの表現がとても美しいと感じました。
※今井俊之さんについて、2023年6月26日の「本庄経済新聞」様の記事にて紹介されました。こちらをご覧ください。
旧本庄仲町郵便局跡にキャップ工房&ショップ「ワンダーファブリック」(本庄経済新聞様記事)
※オープン前の2023年1月17日には、今井さんをはじめ、本庄まちNET代表の戸谷正夫さん(戸谷正夫建築設計事務所)、須田修二さん(須田修二一級建築事務所)が、戸谷八商店をご訪問くださいました。
(その時の様子につきましては、こちらの記事をご覧ください。)
◆「旧本庄仲町郵便局」(国の登録有形文化財)の歴史
~創立開局日:明治5年(1872年)3月21日~
●明治4年(1871年)、「日本近代郵便の父」前島密によって「郵便制度」が開始。
●明治5年(1872年)、前島密の依頼により、10代諸井泉衛(せんえい)が自宅に、「本庄郵便取扱所」を開設。初代郵便局長となる。
●明治10年(1877年)、慈恩寺火災により「諸井家」焼失。
→諸井泉衛は、大工を横浜につれていき洋館を観察させる。
●明治13年(1880年)、諸井泉衛は、「諸井家住宅」(埼玉県指定文化財)を建設。
※当初は「本庄郵便局」として居宅と兼ねていた。
●郵便局の局長職は、初代局長:諸井泉衛氏、2代:逸郎氏、3代:恒平氏、5代:貫一氏と受け継がれる。
(※戸谷家12代目の戸谷 間四郎は、3代目諸井 恒平氏と5代目諸井 貫一氏の間に4代目郵便局長をしていました。)
●昭和9年(1934年)、諸井恒平が「本庄仲町郵便局」を建て替える。
●平成10年(1998年)、「本庄仲町郵便局」(昭和9年に建て替えられたもの)が「国の登録有形文化財」となる。
●令和元年(2019年)12月2日、「本庄仲町郵便局」は「ビバモール本庄郵便局」と改称し、中央2丁目のスーパービバモール本庄内に移転。「旧本庄仲町郵便局」は閉鎖。
●令和5年(2023年)3月21日、今井俊之さんが、「旧本庄仲町郵便局」にて、CAPブランド「W@NDERFABRIC®(ワンダーファブリック)」(工房兼新店舗)をリニューアルオープン。
(6月14日の本庄すまいる日和にて)
◆「諸井家」の方にいただいた生地で製作されたCAP
この帽子は、諸井家で使用されていた着物の生地で製作されたものとのことです。
諸井家とワンダーファブリックさんとのコラボが実現した、大変貴重な作品だと思いました。
◆『際(きわ)』の地であり、『間(はざま)』の地である本庄地域
このたびは、戸谷八商店での本庄すまいる日和にご参加くださいましてありがとうございました。
本庄市には、中世からの歴史の風土が残っています。
戸谷家の先祖や諸井家の先祖は、中世の時代にあたる西暦でいうところの1560年前後に、利根川の川港であった世良田から本庄の地へ、「花の木18軒」といわれる仲間とともに移ってきたと伝えられています。
その時代、世良田や本庄の地域は、『際(きわ)』と『間(はざま)』の場所であったといわれています。
大大名である上杉氏の支配圏の端(はじ)であり、際(きわ)であり、また、同じく大大名である北条氏の支配圏の端であり、際であり、さらに、大大名である武田氏の支配圏の端であり、際でありました。
世良田や本庄の地域は、上杉氏、北条氏、武田氏の『際(きわ)』であると同時に、上杉氏、北条氏、武田氏全てにかかわる『間(はざま)』の地でもありました。
「花の木18軒」の仲間たちは、商人でもあり、上杉氏とも北条氏とも武田氏とも商売で繋がっていた(自主独立の精神)と伝わっています。
『際(きわ)』の地であり、『間(はざま)』の地である世良田や本庄は、戦乱が繰り広げられる非常に困難な場所であると同時に、商売をするには特別に好都合な場所だったとも考えられていました。
『ブラタモリ』では、タモリさんが番組内で、「際(きわ)が面白い」と何度も発言なさっています。
世良田や本庄は、どこの支配に属しているのか定かではない中間領域にあたり、波乱万丈なことが自然発生する魅力的な場所でもありました。
今回、ワンダーファブリックさんの内装の建築コンセプトとして、日本家屋の中で中間領域を象徴する「軒下」という場所に焦点があてられたこと、とても面白く感じました。
「軒下」は、建物のプライベート的な場所に接すると同時に、外にも開かれたパブリックな場所でもあります。
(建築家の隈研吾さん流にいうと、そういう軒下の場所は、”猫たちが集う特別な聖なる場所”です。※隈研吾さんの「猫の五原則」参照。)
世良田や本庄地域は、上杉氏、北条氏、武田氏の支配領域に接するだけはなく、物流の要でもあった利根川にも接してきた長い歴史を持つ場所です。この地域は言わば、「中間領域」や、あっちにも属するしこっちにも属するといったような「宙ぶらりん」な感じを常に抱き続ける不思議な感覚をアイデンティティの一つとして長い間、持ち続けてきた『間(はざま)の場所』でもありました。
そんな特別なアイデンティティを持つ場所だったからこそ、世良田は利根川の川港として長い間、最大の港であり続けたし、本庄宿は、江戸中期以降、中山道で最大の宿場町であり続けました。
こうした中間領域の持つ土地の記憶を「軒下」という建築コンセプトでまとめ、ワンダーファブリックさんの内装の大きな軸とされたこと、とても素晴らしいアイデアだと感じました。
今井俊之さんの作品自体、和の文化の象徴である絹文化と、現代のストリート文化に通ずるCAPを融合させ、中間領域において新たな美を創造し、際立たせるアート作品となっております。
『際(きわ)』の地であり、『間(はざま)』の地である本庄地域で、新たなアートな動きが始まること本当によろこばしく思います。