~「島村蚕のふるさと会」さんは、大型養蚕農家『進成館(しんせいかん)』(田島善一様宅)にて「やぐら」の公開や、企画展(2階)の開催等を行っています。~
丸橋 利光(まるはし としみつ)さんは、元銀行員で、現在は「島村蚕のふるさと会」にてボランティアガイドをなさっています。
「島村蚕のふるさと会」は、毎月第3日曜日に、大型養蚕農家「進成館(しんせいかん)」において、「櫓(やぐら)」の公開や企画展を行っておられます。
丸橋さんの歴史史料は上毛新聞で取り上げられたこともあるとのことです。大間々の銀行の話や、中瀬の古文書の話など興味深いお話ばかりで大変勉強になりました。
◆世界遺産『田島弥平旧宅』
~「富岡製糸場と絹産業遺産群」を構成する資産の1つとして、平成26年(2014年)に世界文化遺産に登録~
田島弥平旧宅は「富岡製糸場と絹産業遺産群」の構成資産の一つとして、平成26年(2014年)に世界文化遺産に登録された国指定史跡です。主屋のほか、桑場(くわば)、別荘、井戸、種蔵(たねぐら)、文庫蔵などが残っています。
田島弥平(たじま やへい)は、文政5年(1822年)蚕種(さんしゅ)の産地であった上州島村(現在の伊勢崎市境島村)に生まれました。
優良な蚕種 を生産する養蚕技法 「清涼育(せいりょういく)」 を大成しました。「清涼育」 は、蚕室(さんしつ)内の空気を循環させ、自然に近い環境で蚕を飼育する方法です。幕末から明治にかけての養蚕業の発展に貢献しました。
弥平は、「清涼育」に適した施設として、棟上に換気設備の「櫓(やぐら)」を備えた瓦葺き総二階建ての住居兼蚕室を建築しました。1階は住居で、2階が蚕室でした。
「やぐら」を付けた養蚕農家建築は、その後の「近代養蚕農家建築の原型」となりました。
弥平が著した『養蚕新論』・『続養蚕新論』は、実証的な研究書として高く評価され、多くの蚕種家・養蚕家に影響を与えました。
◆田島 弥平(たじま やへい)
【略年表】
・文政5年(1822年)田島弥平(2代目)、上州島村(現在の伊勢崎市境島村)に生まれる。
・文久3年(1863年)田島弥平が『清涼育(せいりょういく)』を確立し、蚕室を建築、近代養蚕農家の原型となる。
・明治4年(1871年)渋沢栄一翁は、「宮中御養蚕(きゅうちゅうごようさん)」の世話役に田島武平を推薦。(第二回~第四回の世話役は田島弥平が務めた。)
・明治5年(1872年)「富岡製糸場」が開業。渋沢栄一翁が設立に大きく関わる。初代場長は尾高惇忠。
・明治5年(1872年)栄一翁の勧めで、田島武平・田島弥平らが蚕種販売を目的とする会社として「島村勧業会社」を設立。(田島武平が社長、弥平が副社長の一人に就任。)
・明治5年(1872年)『養蚕新論』を刊行。
・明治12年(1879年)『続養蚕新論』を刊行。
・明治12年(1879年)田島弥平は島村勧業会社社員2名とともに「イタリアへ蚕種の直輸出」を行なう。※明治15年まで4回行う。
・明治31年(1898年)田島弥平亡くなる。76歳。
・昭和23年(1948年)貞明皇后(大正天皇妃)が蚕糸・絹業関係の視察で田島弥平宅を行啓。
【渋沢栄一翁との親戚関係】
田島武平の妻「しげ」は、栄一翁の従妹。しげの妹の「よし」は、栄一翁の従弟の渋沢喜作の妻。
◆世界遺産・田島弥平旧宅を支える「大型養蚕・蚕種農家の建物群」
田島弥平旧宅のまわりには、今でも「大型養蚕・蚕種農家の建物」が多く残っています。「やぐら」の形は様々で、家々の工夫が伝わります。
■ 国登録有形文化財に登録された田島弥平旧宅周辺の「養蚕・蚕種農家の建物名」
【2021年2月26日】登録
・「田島善一家住宅主屋」・【進成館(しんせいかん)】(群馬県伊勢崎市境島村2209番地)
・「田島達行家住宅主屋」・【對青蘆(たいせいろ)】(群馬県伊勢崎市境島村2247番地他)
・「金井義明(よしあきら)家住宅主屋」(群馬県伊勢崎市境島村2439番地他)
【2021年6月24日】登録
・「田島亀夫(かめお)家住宅主屋」・【有隣館(ゆうりんかん)】(埼玉県本庄市宮戸字西浦650-3)
【2021年10月14日】登録
・「町田清(きよし)家住宅主屋」(群馬県伊勢崎市境島村3143番地他)
丸橋さんは、世界文化遺産「田島弥平旧宅」の近隣にある養蚕・蚕種関連の文化財的価値を一体的に保存されることを望み、今ご活動されているそうです。
◆「進成館(しんせいかん)」(田島 善一様宅)
地元住民らでつくる「島村蚕のふるさと会」は、毎月第3日曜日に「進成館(しんせいかん)」(田島善一様宅)の「やぐら公開」のボランティアガイドをされています。
世界遺産『田島弥平旧宅』の「総やぐら」は非公開のため、「進成館」のやぐらを公開することで、同じ江戸末期に作られた弥平のやぐらの構造や雰囲気等を感じてもらうための試みだということです。
●【公開日】毎月第3日曜日
●【時間】午前10時~午後4時
●「やぐら」に上がる体験ができます。二階では企画展を開催。
※「進成館」のやぐら公開についての上毛新聞コラム記事【三山春秋(2017年4月4日)】はこちらです。
◆「島村蚕のふるさと会」さん
「島村蚕のふるさと会」の皆さんは、これまで、世界遺産『田島弥平旧宅』の見学者のおもてなし活動や、「やぐら」のある周辺養蚕農家の見学・ガイド、「進成館」での企画展等、島村地区の絹文化遺産を普及・継承するための活動をなさってこられました。
【上毛新聞記事】
2020年1月19日(日) に「進成館」にて開催された、『郷土の偉人 田島弥平・渋沢栄一展』の様子です。
丸橋さんご自身が集めてこられた資料も数多く展示されているとのことです。
もともと、伊勢崎市(境島村)・本庄市・深谷市(中瀬)地域は、江戸時代から「利根川文化圏」でつながりが深い場所です。
この利根川文化圏の歴史を深く知るには、なかなか実行するのは難しいことだとは思いますが、県や市の境界を超えて、近隣地域にある、貴重な養蚕関連の建物群等を、一体的に保存・活用・発信させていく取り組みが必要だと、僕も強く感じました。(世界遺産である田島弥平旧宅と新一万円札の渋沢栄一翁関連の建物等の連携など。)
丸橋さんから様々な古文書を見せていただきました。特に中瀬河岸の斉藤家の古文書についてはこれから上毛新聞に取り上げられるかもしれないとおっしゃっていたのでとても楽しみです。
このたびは、戸谷八商店にご訪問くださいまして誠にありがとうございました!!